カテゴリ:お酒に関する話題( 53 )

小泉武夫『発酵 ミクロの巨人たちの神秘』

 一冊の本を紹介させてください。
 小泉武夫『発酵 ミクロの巨人たちの神秘』中公新書 1989年(平成元年)
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 著者の小泉武夫、ご存知の方も多いかと思います。こんなサイト(「発酵食品情報サイト 丸ごと小泉武夫食マガジン」)もありますね。発酵食品のポータルサイトです。とても面白いです。

 さて、この本を読んで思ったことが、一つあります。
 お酒類に日々接していると、とても大事な事実をポッカリと忘れてしまっているようです。それは、“発酵を経ていないお酒はない”ということです。オークションで数千万円の値段が飛び出すようなロマネ・コンティであれ、ホッピーのキンミヤ焼酎であれ、“発酵”があるからこそ、お酒なのです。
 自分も含め、サービス業に携わる人は、お客様へ提供する品の良し悪しに関しては、かなり神経を尖らせています。良し悪しを判断するセンスや手腕が、そのままサービス業として評価されるポイントにもなってきますから、当然ではあります。
 しかしそれはすなわち、目の前の品に、それも表面的なことにばかり神経を奪われ、“そもそもお酒とは何ぞや”についてスキップしてしまっている、ということかもしれません。

 ところで、ひと口に“発酵”と言っても、実にさまざまな領域があるようです。お酒やパンや乳製品、味噌・醤油・酢、納豆に漬物…お馴染みの食品はもちろん、グリセリンやアセトンといった爆薬の原材料製造、さらには産業廃棄物や廃水の処理…
 著者は、そのあたりを次の文言で端的にまとめています。
 「要するに、微生物の持っている機能を広く物質生産に応用して、人間の有益なものに利用することを今日では広く発酵と呼ぶことにしている。」(p.49)

 お酒類を扱うということを言い換えると、微生物の力と人間の知恵との協働とも言える“発酵”の賜物を扱う、ということになると思います。
 一杯のお酒にも、目に見えない神秘と先人の努力とが重なっている。そう考えると、毎日の仕事にも張り合いが出てきそうです。

 この本は、弊店の本棚に置いておきます。ぜひ読んでください。

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by connection1970 | 2017-03-19 13:43 | お酒に関する話題 | Comments(0)

川又一英『ヒゲのウヰスキー誕生す』

 一冊の本を紹介させてください。
 川又一英『ヒゲのウヰスキー誕生す』新潮文庫 2014年(平成26年)
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 NHKの連続テレビ小説『マッサン』。2014~2015年にかけて半年間、放送されました。記憶に残っている方も、少なくないでしょう。
 ニッカウヰスキーの創業者・竹鶴政孝とその妻リタとの実話をモデルとして、大正~昭和の日本のウイスキーづくりをわかりやすく描いている、とても良いドラマでした。数回だけは見逃してしまいましたが、最初から最後まで楽しく見続けることができました。
 『マッサン』の影響は、大きかったと思います。放送がスタートして間もない頃でした。20代後半あたりと思われる女性がお2人でご来店で、「山崎10年と余市12年(両方とも販売終了品;当時弊店には少しだけ残っていた)、どちらもストレートでお願いします」とご注文でした。うわぁ~、女の子でもこのウイスキーか、しかもストレート!声には出さなかったものの、ずいぶん驚かされました。

 画像で掲出している『ヒゲのウヰスキー誕生す』は、『マッサン』放送スタートのタイミングを見据えてのことだったのでしょう、2014年07月発行となっています。ただし、解説の後に「この作品は昭和五十七年十一月新潮社より刊行された。」と記されています。当初の、つまり昭和57年(=1982年)の単行本も、竹鶴政孝が1979年08月に没していることから考えてみれば、タイミング的に適切だったのかもしれません。

 NHKの『マッサン』公式サイトによれば、「原作・脚本 羽原大介」となっていて、『ヒゲのウヰスキー誕生す』に関しては特に言及がありません。しかし、読み終えた自分としては、『マッサン』のドラマ構成にかなりの影響を及ぼしているな、と感じました。また、何かしら公式サイトで紹介しておくのが親切ではないか?とも思いました。

 少し話が戻ります。この本の初版は1982年です。35年前です。2017年の現在とでは、ウイスキー事情が若干異なっていることをあらかじめ認識しておかないと、読んでいてやや違和感が出てくるかもしれません。
 現在では、より選ばれた素材を、より手作りに近い方法で、より小規模に生産をしているウイスキーが、尊ばれる傾向にあると思います。象徴的なのが、スコットランドや日本のシングルモルトです。蒸溜所に近い産地の大麦を手作業で加工、厳選したオーク樽で○○年熟成、ボトリングは限定数千本、この類の商品に注目が集まって、瞬殺で売り切れたりもします。
 一方、1982年の時点ではどうだったでしょうか。自分はまだ12歳でしたから、世のウイスキー事情は知るはずもなかったのですが…少なくとも現在ほどシングルモルトが流通していなかったのは、確かなようです(※1)。当のニッカウヰスキーも、自社初のシングルモルト「北海道」をリリースしたのは1984年になってからでした(※2)。この時代は、ニュートラルな性質のグレーンウイスキーと個性的なモルトウイスキーとをいくつか混ぜ合わせることによって味と香りの特徴を出す、ブレンデッドウイスキーがほぼ独占的に主流だったようです。
 『ヒゲのウヰスキー誕生す』でも、ブレンデッドウイスキーの完成を最終的な到達点としています。書中から引用します。

 (前略)ニッカウヰスキーでは単式蒸溜器でモルト・ウイスキーを造り、カフェ式蒸溜機によるグレイン・ウイスキーとブレンドできるまでになった。そして来年には仙台にもう一つ原酒工場ができる。(中略)仙台の工場が蒸溜を始めたあかつきには、余市の原酒と仙台の原酒とを混合し、西宮工場のグレイン・ウイスキーとブレンドしてブレンディド・ウイスキーの名にふさわしい製品が育っていくだろう。
 (pp.314-315)

 やや専門的な用語が含まれていますが、ごく簡単に言ってしまえば、現在もてはやされているウイスキーとはちょっと違う、規模の大きい工場で生産した完成品を竹鶴政孝が目指していた、ということになると思います。

 とは言え、この35年間に状況の変化があるにしても、日本のウイスキーづくりに大きな足跡を残した偉人を知るための好著であることは、間違いありません。
 弊店の本棚に置いておきます。ぜひ読んでください。

【追記】
 当書のエピローグで興味深い事柄が書かれている。著者は竹鶴リタの出身地=スコットランドのカーカンテロフ(Kirkintilloch,カーキンティロックとも)の町立図書館で調査をした。その際に司書から、この町が1968年まで禁酒区だったことを聞き取っている。
 スコットランドと言えばウイスキーの本場であり、当地の人々も誇りに思い伝統的に好んで飲んでいるのでは?と勝手に思い込んでしまっていたが、必ずしもそうでないばかりか、近年まで禁酒運動(temperance movement)の影響が強かった土地と知り、驚いている。

(※1)土屋守『ウイスキー通』新潮選書 2007年 p.23
(※2)『ニッカウヰスキーと私~竹鶴威の回想録~』「第61話 シングルモルト北海道

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by connection1970 | 2017-02-02 17:28 | お酒に関する話題 | Comments(0)

村上春樹『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』

 一冊の本を紹介させてください。
 村上春樹『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』新潮文庫 2002年(平成14年)。
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 著者の村上春樹に関して、改めて云々するまでもありませんね。
 いえいえ。半可通を気取るばかりか、この人の本をほとんど読んだことがありません。雑誌『芸術新潮』に連載していたエッセイをまとめた『ポートレイト・イン・ジャズ』と、トルーマン・カポーティの短編小説『あるクリスマス』の翻訳版との、2つだけです。
 そんな、全くと言っていいほどの知らない人の割には、勝手に親近感を抱いています。村上春樹は、JR中央線・国分寺駅の近くで「ピーター・キャット」という飲食店を営んでいたそうです。しかも、ビルの地下にあったそうです。
 ええーッと。中央線沿線にある地下の飲食店。ずいぶんと根拠の薄い親近感なのですが…

 さて、表題の本です。
 非常にのんびりとした旅行記だと思います。有名な観光地を歴訪するのでもなく、荷物の詰まったリュックサックを背負って自分探しをするのでもありません。給料も出たことだし、今度の週末はヒマだからちょっと遠くへ行こう。レンタカーで宇都宮へ行って、餃子でも食べるか。それとも新幹線で金沢まで行って、魚介類で一杯やろうか。そんな感覚で出かけたような雰囲気です。
 目的地は、スコットランドとアイルランドです。どちらも、ウイスキーの生産地として世界的に名高い所です。とは言え、この本で取り上げられているのは、かなりのピンスポットです。スコットランドでは、アイラ島。「ボウモア(※)」や「ラフロイグ」などの個性的なシングルモルトウイスキーが生まれる土地ですが、淡路島くらいの面積しかない島です。アイルランドに至っては、人口5,000ほどのロスクレアという小さな町、しかもその町にあるごく普通のパブです。
 せっかく地球の反対側まで行って、これかい?と物足りない気分になるかもしれません。壮麗な描写が連なるわけでもないですし、歴史の重みを感じさせる記述も、少ないです。旅行ガイドブックに欠かせない“見どころチェック”もないですし、みやげ話に期待しがちな小さな冒険譚も、ありません。ウイスキーの生産地に行って、うまいウイスキーを飲んできたよ。ただそれだけの報告、と言っても良いでしょう。
 しかしながら、うまいウイスキーを飲むためには有効な一冊の参考書だ、と断言できます。

 弊店の本棚に置いておきます。ぜひ読んでください。もしあなたの興味がウィスキーに向かっているなら。

(※)書中に“ボウモア蒸溜所のマネージャーであるジム”という人が出てくる。数年前、ある商社の催したウイスキーのセミナーでこの人が登場した。ボウモア蒸溜所ではなく、ブルイックラディ蒸溜所のマネージャーだった。セミナー会場でやんやの喝采で迎えられていて、なぜこんなにも人気があるのだろう?と不思議に思った記憶がある。あぁなるほど、そういうことだったか、と合点がいった次第。

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by connection1970 | 2017-01-27 15:39 | お酒に関する話題 | Comments(0)

お酒の香りと味/その21・ジ・アラン・モルト・カスクストレングス12年

 前回の「その20・ジ・アードモア・レガシー」はいかがでしたか?
 今回もスコットランド産のシングルモルトウイスキーです。「ジ・アラン・モルト・カスクストレングス12年」です。
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 例によって、蒸溜所をGoogleマップで探してみました。スコットランドの南西部、クライド湾にアラン島があります。面積は約427k㎡。種子島が約444k㎡らしいですから、それなりに大きい島と思われます。
 アラン蒸溜所は、ロックランザ(ロッホランザ、か?) Lochranzaという港湾村落にあるようです。航空写真で見る限りですが、小ぶりな部類に入る蒸溜所と推測されます。島の小さな蒸溜所で作られるウイスキー…うーん、それだけで物語性が十分にありそうです。
 あれれ?ロックランザについて調べているうちに、変なものを見付けましたよ。「ウェイヴァリー Waverley」という船。これが何と外輪式蒸気船!ロックランザへ入港することもあるようです。うわ~ッ、乗船してみたい。
 えーと…今回も「お酒の香りと味」のシリーズなので、そろそろ本題に移りましょうか。

<色>
 淡い黄色。うっすらと白い濁り。
 ウイスキーが入ったグラスを傾けると、内側に液体がネットリと付着しているのがわかる。アルコール分が多い証左だろう。

<香り>
 鼻を近付けると、いかにもアルコールの強い感じ。しかしながら、ピリピリとした刺激ではない。白ワインの香りやレモンの香りがある。

<味>
 ラベルにはアルコール52.9%と誇らしげに表記してある。数値は強烈だが、実際に口に入れてみると、意外にアタックは小さい。樽熟成ゆえの、まろやかさだろうか。落ち着いた木材の芳香がまず広がり、次にピリリとしたアルコールの力強い刺激が続く。シャープな味だが、甘さがある。レモンの蜂蜜漬けを思い出させる風味。パンの生地を発酵させているような香りも出てくる。甘味は口の中に残り、白ワインの香りが鼻腔へ抜ける。

<余韻>
 香りよりも、味としての甘みが口内に残る。アルコールの力強さが裏返ったかのよう。オレンジのマーマレードを思わせる。

<所感>
 20分ほどかけて約30mlの量を飲んでみた。最後のあたりは甘みが増加していた気がする。
 強いアルコール分がいくらか揮発したことで刺激が減って、甘みの成分は残存していた、ということだろうか。
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by connection1970 | 2016-11-28 16:07 | お酒に関する話題 | Comments(0)

お酒の香りと味/その20・ジ・アードモア・レガシー

 前回の「その19・オールドプルトニー12年」はいかがでしたか?
 今回もスコットランド産のシングルモルトウイスキーです。「ジ・アードモア・レガシー」です。
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 このところ、ウイスキーの蒸溜所をGoogleマップで探すのが好きです。今回も調べてみました。“ardmore”で検索してみると…おー!バルブレアやグレンモーレンジの蒸溜所も近辺に出てきました。やはりウイスキーの本場、スコットランドですねぇ。んんん?でも、肝心のアードモア蒸溜所が見当たりません。おかしい。オフィシャルHPを再度良く見てみると、「ケネスモント Kennethmont」という地名が出てきます。そこで改めて“Kennethmont”で検索してみました。はい、しっかり見付かりました。かなり大きな敷地の工場ですね。
 それにしても、このウイスキーがなぜ「ジ・アードモア」なのか?わかりません。もう少し調べてみて、かろうじてわかったことは、“ardmore”という地名がスコットランドだけでなく英語圏の国々に散在している、ということです。
 えーと…今回も「お酒の香りと味」のシリーズなので、そろそろ本題に移りましょうか。

<色>
 明るいオレンジ色。黄色が強い。

<香り>
 ラベルに「軽いピート lightly peated」との表記あり。そのためスモーキーな香りを想定するが、実際には鼻を近付けてもあまり感じられない。もちろん、正露丸のような強烈な香りもない。むしろ、フレッシュな植物を思わせる。オレンジ。ミントの葉。

<味>
 口に含むと、意外にスモーキーな芳香が広がる。アルコールのアタックは小さめ。ピートの効いたウイスキーらしく、やや苦味がある。オリーブオイルに似ているような気がする。強くはないが、甘みもある。黒砂糖を想像させる、濃色の甘さ。
 全般的に軽めな味わいで、サラリと飲める。

<余韻>
 口に残る味は少ない。しかしながら、ピート香はしばらく口腔の奥に残っている。

<所感>
 アルコール40%で、ライト。濃厚でリッチな味わいではない。それゆえ、ピートの香りや味になかなか親しめない人でも、接しやすいだろう。
 スコッチウイスキーにおけるピートとは、東南アジア料理におけるパクチーに近いのでは?と思うことがある。独特な香りを嫌う人が多い反面、それに魅了された人には至福…
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by connection1970 | 2016-11-23 21:25 | お酒に関する話題 | Comments(0)

お酒の香りと味/その19・オールドプルトニー12年

 前回の「その18・ザ・グレンロセス ヴィンテージ1998」はいかがでしたか?
 今回もスコットランド産のシングルモルトウイスキーです。「オールドプルトニー12年」です。
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 先月、当ブログに「ピトロクリ(ピトロッホリー)」という記事を作成しました。スコットランドのほぼ真ん中にある町と、そこで生産されているウイスキー2銘柄について書きました。
 この「オールドプルトニー」の蒸溜所は、同じスコットランドでもかなり北にあるようです。ウィックという、小さな港町なんですね。いわゆる“盲腸線”の終着駅もあって、実に興味をそそられます。
 えーと…今回は「お酒の香りと味」のシリーズなので、そろそろ本題に移りましょうか。

<色>
 明るい褐色。もしくは、赤みと黒みがやや強いオレンジ色、と言えば良いか。

<香り>
 アルコール感は強くない。枯葉、土、海藻を想像させる、やや重い印象。リンゴの皮やレーズンなど、落ち着きのあるフルーツ系の香りも。

<味>
 口に含むと、ロースト感のある甘さ。すんなりと口内に広がり、アーモンド入りのキャラメルを思わせる。アルコール40%ということもあり、重々しさはない。甘さは早めに消えて渋さへと変わっていく。

<余韻>
 短めかと思う。紅茶に近い渋味が残る。 

<所感>
 ピリリとした刺激がなく、すんなりと広がるのは、アルコール40%だからだろうか。
 一方で、香りの要素は豊かだ。飲み終えた後のグラスを嗅ぐと、感動的ですらある。バニラのような、スパイスを思わせる芳香がしっかりと貼り付いている。
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by connection1970 | 2016-10-26 21:16 | お酒に関する話題 | Comments(0)

ピトロクリ(ピトロッホリー)

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 以前このブログで少し書いたのですが、最近「5大ウイスキー」という表現を見かけることが多くなりました。スコットランド、アイルランド、アメリカ、カナダ、そして日本。何が“大”の根拠なのか、いまひとつ自分は理解できていないのですが…いずれにせよ、ウイスキーづくりの技術や歴史を持ち、優れた製品を市場に出し続けている、といった共通点はあるようです。
 「5大ウイスキー」の解説には、ほぼ必ず「○○産は□□の特徴があって、●●産は■■の特徴がある…」との記述が出てきます。産地を基準にしたこの分類、うなづけるところもあるのですが、どうにも共感できないところもあります。
 日本の大手メーカー2社の製品を例にすれば、原料の穀物はほぼ輸入に頼っているようです。また、スコットランドでは、アメリカのバーボンやスペインのシェリーに使われていた樽を輸入して再利用し、個性的な香りや味わいを作り出すことが伝統的に行われています。これらを単純に、日本産のウイスキーは…スコットランド産のウイスキーは…と分類してしまうのには少し抵抗があります。
 21世紀の現代、交通機関は十分に発達しており、物も人も激しく動いています。情報の伝達も、数十年前とは全く比較にならないほど、量とスピードと正確さが増しています。その渦中で、産地という基準は、意義を失いつつあるように思えます。

 …と、批判めいたことを書いてみました。
 自分は、上記のようなことを言いながら実は、“どこでこのお酒が作られたのか?”に、ついつい興味を持ってしまうタイプでもあります。
 昨今では、web上のマップで海外の土地の様子も簡単に見ることができます。また、旅好きな人のブログには、写真がたくさん載せられていたりします。画像にある2本のウイスキー「ブレアアソール12年」(左側)「エドラダワー10年」(右側)も、PCで少し検索するだけで、蒸溜所とその周辺の物事がどんどん見えてきます。
 その2つの蒸溜所は、どちらも「ピトロクリ(ピトロッホリー) Pitlochry」にあります。スコットランドのほぼ中央に位置して、保養地・観光地として知られています。関東近郊で言えば、軽井沢や清里のような町です(現地を見てきたようなことを言っていますが、一度も行ったことはありません…)。
 このピトロクリ、かの夏目漱石の随筆集『永日小品』に出てきます。「昔」という題の、短い回想記です。冒頭の部分を引用します。

 ピトロクリの谷は秋の真下にある。十月の日が、眼に入る野と林を暖かい色に染めた中に、人は寝たり起きたりしている。十月の日は静かな谷の空気を空の半途で包くるんで、じかには地にも落ちて来ぬ。と云って、山向へ逃げても行かぬ。風のない村の上に、いつでも落ちついて、じっと動かずに靄んでいる。その間に野と林の色がしだいに変って来る。酸いものがいつの間にか甘くなるように、谷全体に時代がつく。

 都会から離れた静かな田舎町で、ゆったりと時間が流れているのが伝わってきませんか?
 漱石がピトロクリを訪ねたのは1902年(明治35年)とのことですから、1世紀以上も前のことです。自動車も家電製品もスマートフォンも普及した現在と、時代の差が大きいことは明らかです。
 でも、東京にいてPCで「pitlochry」とインターネットに入力するだけで、緑豊かな山と谷、小ぢんまりとした町、それから粛々とウイスキーを作り続けている蒸溜所…昔々とほぼ変わっていないであろう、そんな風景がたくさん見えてきます。

 あれれッ?ピトロクリには、水力発電所があるようですね。何だか自分の生まれ故郷に、ちょっとだけ似ているような気がしてきました。
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by connection1970 | 2016-09-21 11:12 | お酒に関する話題 | Comments(0)

お酒類の外箱

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 この種の物、いろいろな面白いデザインがあって、決して嫌いではないのですが…なくても良いのでは?と個人的に、思っています。
 ボトル1本の価格が3,000円以上のお酒類になると、外箱が付属してくるような気がします。その中身は、スーパーでも陳列されているようなデイリー需要がある品々に比べると、香りや味で一枚も二枚も上手であることは確かです。また、奮発したプレゼントや、ビジネス上の贈答品で使われることを考えれば、これくらいの装いが必要になってくるのも、わかります。でも、弊店に関して言えば、即廃棄なんですよねぇ。
 これらの外箱、ご興味のある方には差し上げます。ご連絡ください。言うまでもありませんが、無償です。
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by connection1970 | 2016-09-15 13:57 | お酒に関する話題 | Comments(0)

カクテルを作ろう/その10・クレーム・ド・カシスの水割り

 こんばんは。
 前回の「その9・オレンジ入りバーボンソーダ」はいかがでしたか?参考になれば、幸いです。
 さて、今回は“カクテル”と言って良いのかどうか、わかりません…シンプル極まりない、水割りです。
 何で見かけたのか忘れてしまったのですが、「クレーム・ド・カシスを使ったおすすめカクテルは?」というテーマの中で紹介されていました。えぇぇ~?水割り!意表を突かれましたね。
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◎その10・クレーム・ド・カシスの水割り

<材料と分量> 
①クレーム・ド・カシス(ルジェ・クレーム・ド・カシス・ド・ディジョン) 30ml
②水 30ml

<手順>
1.ミキシンググラスもしくはビーカーに、クレーム・ド・カシスを入れる。
2.水を加えてバースプーンやマドラーで良く混ぜる。
3.ワイングラスに注ぐ。

【色と香りと味】
・クレーム・ド・カシスの原液は、ほぼ黒でドロッとしている。同量の水が加わったことで、赤ワイン程度の色合いに。トロッとしてはいるが、だいぶ粘度は下がっている。
・鼻を近付けると、ハーブ系とフルーツ系が混合したような強い香り。典型的なカシスのそれだ。ルジェのクレーム・ド・カシス・ド・ディジョンは、カシスの果実はもちろん、カシスの芽も使って特徴を出しているらしい。《当ブログ2014年06月11日の記事『カシスについて少々』を参照。》
・口に含むと、やや渋味と苦味が勝っている印象。やや遅れて強い甘味。
・酸味はほとんどない。もしかしたらあるのかもしれないが、甘味が強いのでわからない。
・クレーム・ド・カシスの原液がアルコール20%。1:1の水割りなので、10%になっている。

【所感メモ】
・冷蔵庫に入れていたクレーム・ド・カシスと水とで作った。両者を混ぜても冷たい。一般的に、渋味と苦味は低い温度でより強く感じられる。常温の水、あるいはあまり温度の高くないぬるま湯で作れば、印象が変わるかもしれない。
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by connection1970 | 2016-08-31 21:06 | お酒に関する話題 | Comments(0)

ウイスキーに合うつまみは何だろう(実験)/その3

 こんばんは。
 半年前(2016年02月)に「ウイスキーに合うつまみは何だろう(実験)/その2」をUPしました。その後なかなか続編を投げられなかったのですが…良い題材が見つかりましたので、報告したいと思います。
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◎つまみ:ハーゲンダッツ ミニカップ バニラ
◎ウイスキー:ラフロイグ10年(40%)

 この組み合わせ、女性のお客様から聞きました。
 えッ?あの正露丸のようなラフロイグとバニラのアイスクリーム?こりゃ決して自分じゃ思い付かないな!と感心したものの、なかなか試す機会がありませんでした。
 そんな折、ラフロイグ10年のアルコール40%の品を仕入れました。それまで飲んだことのあったアルコール43%の品と全く違い、甘い芳香のあるマイルドな味わいで驚いてしまいました。同時に、このラフロイグなら例の組み合わせに適しているかも?と想像しました。

 さて、実際に試してみます。
 ラフロイグ10年(40%)を口に含んでみます。正露丸や木材の燃えさしのようなスモーキーな風味と、甘味・苦味・渋味とが、口内に広がります。これにバニラのアイスクリーム?と、思わず疑ってしまうかもしれません。
 つまみのアイスクリームを食べてみます。んんん?何と言えば良いのでしょうか。両極端の味わいが、バランスを保っている印象です。ラフロイグ10年(40%)にある、バニラに近い芳香が共通項になっているのか、刺激的なウイスキーとこってりと甘いアイスクリームとが融合しています。
 再度ラフロイグ10年(40%)を口に含みます。んんん?今度は新しい風味が出てきました。どこかで口にしたような…そうだ、これはチーズと海苔との組み合わせに似ている!
 
 今回も良いではないか!と満足しつつも、ふと考えました。
 バニラのアイスクリームは、年齢や性別、食生活の習慣の違いを問わず、恐らく誰にでも好まれる食べ物だと思います。一方のラフロイグは、誰でも飲めるようなウイスキーではありません。苦手な方も、少なからずいます。
 ラフロイグが好きな方に「バニラのアイスクリームと合わせると、面白いですよ」と提案することはできても、ラフロイグが苦手な方やウイスキーを飲んだことのない方に「バニラのアイスクリームがあれば、ラフロイグを飲めるようになりますよ」と提案することはできませんねぇ…
 うーむ。実験の道のりは、とても長そうですね。
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by connection1970 | 2016-08-11 19:57 | お酒に関する話題 | Comments(0)