一冊の本を紹介させてください。
渡淳二監修/サッポロビール価値創造フロンティア研究所編『ビールの科学』講談社ブルーバックス 2009年

03/20(日・祝)付けの当ブログ記事で、
稲垣眞美『日本のビール』を取り上げました。ビールのことを書くべきだったのに、何だかウイスキー寄りの話になってしまったなぁ、と読み返して感じました…
ここ5年ほど、低アルコールの飲料ではビールがブームになっているように思えます。いわゆる“クラフトビール”が話題になり、個性的な品々をコンビニやスーパーの店頭でも見かけるようになりました。そのあたりを意識してなのか、国内の4大メーカーも、定番商品以外のプレミアム品や限定品を頻繁に発売しています。さらに街中では、「世界各国から○○種類の樽生ビール」と謳ったビアバーも人気を呼んでいるようです。
標題の『ビールの科学』。講談社ブルーバックスの一冊です。
高校1年の理科の授業で、担当の先生が「高校生なんだから、ブルーバックスくらい読まないとね」と話していました。そこで、学校近くの書店で1冊手にしてみたのですが、難しいのなんの。これでは全く歯が立たない、と潔くあきらめました。
それから5~6年ほど経過して…理数系が苦手だったはずの自分が、ブルーバックスを1冊、何とか読み切りました。島英彦『オートバイの科学―トータルバランスの限界を求めて』でした。読了できた理由は単純。オートバイが好きで、興味があったからです。
さて、個人的な昔話はこのあたりで止めておきます。『ビールの科学』に、話を戻します。
自分なりの感覚なのですが、親しみづらい部分が少なからずある本ではないか?と思います。いくつか本文から抜粋してみましょう。
大麦は穀粒の実り方によって、穀粒が2列の二条大麦と6列の六条大麦に分けられます。二条大麦は六条大麦の四列が退化したもので、一粒の大きさにおいて優位にあります。ビール醸造では、アルコールをできるだけ多くつくり、かつビールらしいスッキリ感を得るために、デンプンが多く、タンパク質が少なく、酵素力の強い大麦が選ばれる傾向にあり、特に二条大麦はビール用として数多くの品種が育種されてきました。《p.100》 〈前略〉なぜ酵母はアルコールをつくるのでしょうか?酵母は生物なので、成長し増殖しなければなりません。そのためにはエネルギーが必要です。生き物はATP(アデノシン三燐酸)という形でエネルギーを蓄えます。酵母は1分子のブドウ糖をアルコールと炭酸ガスにして2分子のATPを得ます。このエネルギーをよりどころとして、酵母は生きていくのです。解糖系のみを用いる発酵でのエネルギー獲得は酸素がない状況で行われるのですが、実は効率が大変悪くなっています。酵母は酸素のある条件では「呼吸」を行い、この場合は得られるATPは38ATPであり、「発酵」の場合に比べて19倍も効率が高いのです。つまり、無酸素の状態より有酸素状態で酵母は効率よく増殖できるということです。《p.108》 ビールは他の食品と同様に保存中に品質が変化します。〈中略〉代表的なのが、酸化による特有の臭いで、段ボール紙のような臭いがするので紙臭(カードボード臭)と呼ばれています。これは麦芽由来のリノール酸などの脂質が酸化してトランス-2-ノネナールという物質が生成され、これが紙のようなオフフレーバー(不快臭)を放つのです。《p.146》 うーむ。ビールそのものではなく、原料の大麦や、肉眼では見えない酵母、さらには化学物質も登場してきます。ビールが飲めればいいんだよ、そんなことより、どこのメーカーのどの銘柄がうまいのか教えてくれ!という声さえ、出てしまいそうになります。でも、当方はお客様へ飲み物を提供するサービス業です。商品について、詳しく知っているに越したことはありません。
…と前向きなことを書いて締めようとしていますが、正直なところ、一読しただけでは半分も理解できない有様でした。こうした本は、勉強のために折に触れて再読するのが良いかもしれませんね!(はたして再読するのだろうか?)