ボビー・ハッチャーソンの『ハプニングス』を聴いている。
有名人の訃報が流れると、続いて“R.I.P.”というのがどこからともなくインターネット上に出てくる。これがどうも好きになれない。肉親でも友人でも仲間でもない人物の死に際して、こんなに気安く発言ができるものか?と思ってしまう。追悼を踏み台にして勝手な意見を発信したいだけじゃないか、と口を挟みたくもなってしまう。
ボビー・ハッチャーソンが亡くなったらしい。08月15日だったそうだ。自分には、何も関係ない。有名な音楽家が一人、知らないところで一生を終えた。それだけのことじゃないか。
一度だけ、ボビー・ハッチャーソンを見たことがある(ピアノのマッコイ・タイナーとのデュオだった)。何を演奏していたのか、演奏がどんなものだったのか、全く覚えていない。ただし、とてもにこやかで、楽しそうにヴィブラフォンやマリンバを叩いていた様子は鮮明に記憶している。この人は心から音楽が好きなのだろうな、と感じさせるものがあった。
死去を伝えるザ・ニューヨーク・タイムズの記事「
ボビー・ハッチャーソン、音の色彩のヴィブラフォン奏者、享年75歳」を興味深く読んだ。文末に置かれた自身の談話が、洒脱だ。「エリック・ドルフィーは、音楽は風のようなものだ、と言っていたね。その風は、どこから来たのかわからないし、どこへ行ったのかも、わからない。操れるものでもないんだ。せいぜいできるのは、そのフトコロへ収まって、掃き出される、そんなことくらいだよ。」