こんにちは・こんばんは。コネクシオン(高円寺)です。 一冊の本を紹介します。竹鶴政孝『ウイスキーと私』NHK出版 2014年(平成26年)。 画像↑は、前の記事「二つの“ウイスキー”に遭遇した日」にも使っております... 当ブログで何度か話題にしている、ニッカウヰスキー創業者=竹鶴政孝(通称;マッサン/1894年(明治27年)~1979年(昭和54年))が著者になっています。巻頭に、次の記載があります。 本書は、昭和四十七年二月にニッカウヰスキー株式会社が発行した単行本『ウイスキーと私』(非売品)を、改訂復刻し、新たに巻末寄稿を加えたものです。(p.4) また、巻末寄稿の「“ジャパニーズ・ジェントルマン”かくありき~祖父から学んだこと」で、竹鶴政孝の孫・竹鶴孝太郎が書いています。 本書の原本は日本経済新聞に掲載された「私の履歴書」が元となっている。(p.184) 日経の「私の履歴書」ですか!伝統あるコラム。政財界の重鎮や、学術や芸能やスポーツでのトップクラスの人物など、いわゆる大物だらけですから。さすが、ジャパニーズ・ウイスキーのパイオニア。 少年時代(造り酒屋の息子)からして、格が違います。忠海中学(現:広島県立忠海高校)でのエピソード。 三年生から寮に入った。昔の中学の上下の規律は軍隊に近いきびしいもので、寮はその縮図でもあった。下級生は上級生の身の回りの世話係でもあった。その下級生の中に元首相の池田勇人氏がいて、私の蒲団のあげおろしをしてくれていたのもなつかしい。 池田さんの感想では「竹刀をもって部屋を見回りに来る寮長の竹鶴さんは柔道でもならしており、こわいという感じだった」そうである。(p.p.15-16) 池田勇人首相。所得倍増計画、の人ですね。こんな自分でさえ、知っていますよ。 忠海中学を卒業した竹鶴政孝、進学します。 学校でも理科は得意だったから、両親はますます私に期待した。私は酒屋という古めかしい商売には抵抗を感じながらも学問的な興味も手伝って、大阪高等工業(現在の大阪大学)の醸造科を受験して入学した。(p.18) 大阪大学と言えば、旧帝大ですよ。そこへ入学できたのですから、優秀な若者だったに違いありません。 その後の就職。また新たな別格エピソードが飛び出します。 当時の私はからだは柔道で鍛えていたので、頑強そのものであった。十二月の徴兵はまず間違いない。日本酒の仕込みは冬だから卒業の四月末から十二月までは、仕事はあまりない。学校で人一倍洋酒に興味をもって勉強をしてきた私は、この期間だけでもいいから洋酒づくりの仕事を一度実際にやってみたいと思い立った。 「やってみたい」そう思い始めると矢も楯もたまらなくなった。 当時、洋酒のメーカーの第一人者は、大阪の住吉にあった摂津酒造であった。調べてみると、摂津酒造には大阪高工醸造科の第一期の方で、岩井喜一郎氏が常務をされており、十四期の私まで醸造科からは、だれも入っていないことがわかった。そこで、岩井さんに会って頼んでみようと決心した。そして学校の試験の終わったその足で大江橋から電車に乗って岩井さんをたずねた。(p.19) この行動力。真似できそうにありません。いえ。自分の想像を、軽く超えてしまっています。すごい、としか言えません。 1918年(大正7年)、神戸港から竹鶴政孝は出発します。アメリカを経由してスコットランドへ乗り込み、現地の大学や蒸溜所で本場のウイスキーづくりを体当たりで学びます。 グレーン・ウイスキーの実習のために私はグラスゴーの近くにあったジョニー・ウォーカー系の工場に通った。そこはハイランドのモルト蒸留所と違って規模が大きいだけに、私には気軽にやってみろとは、なかなかいってくれない。 有名なウイスキーの連合会社DCLが次第に台頭して、各ウイスキー業者を買収しようとやっきになっていたときだけに、外部のものに対して警戒心も強かった。特にカフェ式連続蒸留機は、バルブの加減がコツなのだが、特定の人以外は近よれず、どうしてもさわらせてくれない。 三週間近く通ったある日、蒸留主任のおじいさんが同情してくれたのか、 「お前は操作してみたいのだろう。あさってから自分が夜勤になるから夜通え、教えてやる」 と約束してくれた。 いわれた通り、その夜行くと、三階にあげてくれて、手を取ってバルブのあけぐあいを教えてくれた。そのほか原料のことや操作上のいろんな注意など、この人から教わったことが非常に多かった。 グレーン・ウイスキーについては、私は文字通りの夜学をしたことになった。(p.62) 執念?あるいは人徳?とにかく、内面的なものも突出したレベルだったと思われます。それまでの日本では誰も経験したことのないウイスキーづくり。こんな下地がある人でなければ、トライすることさえ考えつかなかったでしょう。 竹鶴政孝が生涯全力で取り組んだ成果は、昨今のジャパニーズ・ウイスキーに対する世界的な評価がダイレクトに示しています。なのに、偉大な実績を持つマッサン、言ってくれます。 ウイスキーという、科学だけでは解明しきれない、ある意味で魔性のようなものに自分がとりつかれて、自然の神秘のような力と、人間のあいだをさまよい続けてきたのではないかと思うこともある。(p.139) シレッとしているのが、また… さて、この『ウイスキーと私』を一冊読んで、一番驚いたことを紹介して結びとしたいです。それは、画像中の本の帯にも記されている、特別寄稿の谷村新司「琥珀色の「時」を飲む」に書いてあります。 スーパーニッカのコマーシャルソングのお話をいただいたのは、一九八〇年でした。それまで僕は、そういう仕事はあまりやってこなかったのですが、竹鶴政孝さんの『ウイスキーと私』(旧版)を読ませていただくと、彼の生き方自体にすごく共鳴するところがありました。それで、単に仕事というより、人との出会いだなと感じて、やらせていただくことにしました。そうして生まれたのが、いま僕の代表曲のひとつになっている『昴』です。(p.174) えぇぇぇえぇぇ!!あの『昴』に、そんな背景があったなんて。
by connection1970
| 2021-07-30 23:55
| 本に関する話題
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